2012年7月13日金曜日

iPadは2人用(笑)。

最近ひょんなことから、『新しいiPad』を使っている。わりと普及しつつあるiPadだが、私の周りではまだ購入するかどうか悩んでいる人が多い。その多くは理由として、

「5万円は高い」
「回線の契約?が煩わしい」

などの購入障壁を挙げる。しかし、よくよく話を聞いていくと、

「結局、iPadで何が出来るのか分からない」

というのが購入に踏み切れない理由のようだ。お察しの通り、数ヶ月前まで私もその一員だった。

結論から言えば、iPadは素晴らしい。しかし、それは私がそれを手にするまで想像したこともなかった意味での素晴らしさだ。

おそらく、iPadの所有者は「iPadで出来る事」を次のように挙げるだろう。

「ウェブサイトが見れる」
「メールをチェックできる」
「写真が撮れる」
「アプリが沢山ある」
・・・

しかし、そこに目新しさはない。それはスマートフォンで出来ることばかりだし、家にはパソコンがある。このような説明では、購入検討者がiPadにいまいち魅力を感じられないのもうなずける。
購入検討者が本当に知りたいのは、

「iPadにしかできないこと」

なのだから。

iPad発売当時、スティーブ・ジョブズはiPadのプレゼンテーションの中で、iPadが最適な環境は「リビング」だと言った。当時、それを見ていた私は『寝転がってインターネットが出来る』ぐらいにしか理解していなかった。しかし、今はその意味がよく分かる。

私たちは、パソコンや、携帯電話を見るとき、その「中身」にばかり気をとられているかもしれない。しかし、iPadが変えたのは、その「中身」ではなく、それを見る「環境」だ。

例えば、旅行代理店や、携帯ショップに行ったことがあるなら、そのとき資料がどのように提示されるかを思い出してほしい。きっと、机の上に無造作に広げられ、必要に応じて、あなたの前に差し出されるはずだ。
それは、垂直に立てられたディスプレイや、携帯画面では実現できないだろう。

iPadの特徴である、軽量性、平面性、美しいディスプレイ、そして機能的なカバーはすべて、それを見る「環境」へ向けられたものだ。

私たちはいつから、iPadが「1人用」だと錯覚していただろうか?

例えば、単に「写真が撮れる」という機能に着目すれば、iPadと携帯電話、コンパクトデジカメの間に差は無いだろう。しかし、そこには「1人用」か「2人用」かという決定的な差がある。

携帯電話やコンパクトデジカメに慣れた人は、「どうしてそんな大きなもので撮らなければならないのか?」と言うだろう。しかし、

「ねえ、こんな写真をとったよ!」

という気持ちを伝えたいとき、優れている媒体は一体どっちだろうか?

「2人用(多人数用)」という視点が入ったときはじめて、iPadが写真機であると同時に「アルバム」であることに気付かされる。

持ったり、回したり、揺れたり、角度をつけたり、あらゆる動きにiPadはフィットする。それは、もちろん「1人用」にも適しているだろう。しかし、ジョブズが「リビング」と言ったとき、彼の「リビング」には何人の人がいたのだろうか?

1人のときもあれば、家族がいることも、そして友人が訪れることもある。それが彼の言う「リビング」だったのではないかと思う。

だから、iPadが本領を発揮するのは、テーブル、ソファー、移動中、外出先など、その姿勢が固定されない場所、そして、それを2人以上で見る場合だ。それが「リビング」に最適という意味なのだ。

これを読んでいる皆さんはひょっとするとiPadに、文章や考えをまとめたり、やり残した仕事を外に持ち出すデバイスとしての期待をしているかもしれない。

しかし、その期待はいい意味で裏切られるだろう。あなたはiPadを持ったとき、あまりに多くの「見やすく、見せやすい」場面があることに気がつくだろう。

それが、iPadにしかできないことであり、iPadの魅力なのだ。

私たちは、パソコン、携帯電話を通じて、「1人用」の世界に慣らされてきた。しかし、私たちはそろそろその偏りから解放されてもよいだろう。
「2人用」が作るのは、より身近になった電子デバイスの時代だ。その先駆けがiPadであり、この後に続くであろうタブレット端末の世界なのだろう。