2012年5月8日火曜日

定量問題とその解決


2011年は、原発事故問題やTPP問題など、定量的な判断を伴う問題が注目を集めた年だった。放射線は、どこまでが安全なのか?TPPはいくら儲かるのか?このような問題は、その定量的な判断を抜きにしては答えを導くことができない。

ある主張、あるいはある問題の理解には定性的なものと定量的なものがある。

まず、ある論理的主張A→Zには、AからZを導く際の道順A→B→…→Zが必要である。
ざっくり言えば、これが定性的な関係にあたる。

数学では、論理展開は公理や定義とその組み合わせによって行われるので、その道順の真偽値は100%決まる。これを単調論理という。
しかし、日常的な論理(非単調論理)では、各主張X→Yの真偽値は一般に不明である。そこで、X→Yの真偽についての確率的判断が必要であり、それが定量的な関係にあたる。

例えば、「風が吹けば桶屋が儲かる」というのは論理の鎖としては成り立つが、その確率的判断は信頼できず、論理的主張としては弱い。つまり、どのくらいの風が吹けば桶屋がいくら儲かるのか?という定量的な側面が語られなければ、本当に「風が吹けば桶屋が儲かる」のかは分からない。

このような、確からしさや量の問題を「定量問題」と呼ぶことにしたい。今回の興味は、この定量問題がどこから来るのか、そしてその解決法である。

さて話を進める前に、はっきりさせておきたいのは、これは文科系とか理科系とかの差にはほとんど関係がないということだ。

文科系だろうが、理科系だろうが、人は普段、定量的判断をしながら生活している。なぜなら、日用品、食料品、衣料品などの買い物をするには、その判断が必ず必要だからだ。良いけど高いものと、まあまあだけど安いものがあれば、当然どちらを買うか考える。
そこに文科系、理科系の違いはない。

つまり、普通の人には日常的な生活の中で、定量的判断が身についていると考えるべきだろう。

しかし、ではなぜ定量的判断が身についている人々の間で、原発事故問題やTPP問題が起こるのか。それは、おそらくそのような問題が普通の人々の持つ定量問題の「適用範囲」から外れているからである。

例えば、普通の人に、「こちらの服とあちらの服のどちらが良いですか」と言われたら、定量的に値段や生地、デザインからどちらかを選ぶことが出来るだろう。しかし、「TPP賛成ですか、反対ですか」と言われたら、「そもそもTPPって何?」とか「よくわからないけど反対です」としか答えようがない。

つまり、普通の人にとって、原発事故問題やTPP問題は、内容がめんどくさすぎる問題であって、定量問題などという捉え方をする対象に入っていないのだ。

ある問題が、適用範囲から外れてしまった場合、その問題への対応はおおよそ次のようなパターンがある。

①無視する
②誰かの意見にのっかる
③アンチになる
④情動的に判断する

また、これらの総体として衆愚政治が生まれる。これは、日本のような民主主義国家にとっては根本的な問題であり、これを解決するには、その問題を定量問題として一般の人の適用範囲に入れてやる必要がある。

そのための方法は、おおよそ次のようなものだ。

①データを用意する
②論点を整理する
③○○派に分解する
④○○派と××派を交流させる

まず、議論の土台としてデータが無ければ話にならない。(これは数値データだけでなく、文章なども含む。)データ無しに議論することは、大いなる無駄である。データが出た瞬間に、すべてひっくり返ってしまうからだ。必要なデータを出させるのは、株主や、政治家、あるいはハッカーの仕事である。

次に、論点をある程度整理する必要がある。これは、有志で行う。ある程度の大局観を持たなければ、何が問題で、どこが論点かは分からない。また、このとき○○派を定義する。

その後、全員を○○派に分解する。少なくとも、自分が何派に当たるのかが分かるように、チャートのようなものを作るのが望ましい。いい例えかは分からないが六星占術とか、動物占いのようなものだ。アイドルで誰が好きとか、いわゆる俺の嫁の選出も同じである。ここからは、全員が参加できる難度になる。

そして、最後に○○派同士を交流させる。これは、勧誘合戦といってもいい。その勧誘の過程で論点についての議論が行われる。ただし、ここには利害関係も含まれており、必ずしもディベート的な応酬だけが繰り広げられるわけではない。話合いが決裂すれば、それは戦争にならざるをえない。結果的に、ベクトルは新規○○派獲得や、教育へと向いていく。真に争点となるのは、そこである。

ある問題について、その有識者や関心のある人は①と②をやるのが望ましい。そのとき必ずしも、○○派であることを明言する必要は無い。それは普通の人に「誰かの意見に乗っかる」ことや「アンチになる」ことを促す行為だからだ。
そして、普通の人(有識者でもなく、関心もない人)は③を、さらにその中で暇な人は④をやると良い。

このようにして、めんどくさすぎる問題は、普通の人の定量問題の適用範囲に入る。特に、①②の役割は重要であり、定量問題を解決するには、それを担当する人の数が増えることがポイントとなる。

これらが、2chをはじめとしたネット上でうまくいけば、日本の風通しも少しはよくなるのではないだろうか。