2021年9月22日水曜日

創作理論の根幹を成す空白選択性とその方法について

創作理論における空白選択性、世界跳躍、sign、白紙法などについてある程度まとまったので投稿する。


1.空白選択性

人間には、空白に対して何かを選択する能力があります。

これを空白選択性と呼ぶことにします。


空白選択性は、一般にlive backgroundと情報統合性向場の関数です。

空白とは、前提条件を持たない埋めることが可能な領域、

live backgroundとは、私の今ここにおける全状態、

情報統合性向場とは、情報空間における統合的性質を持つ場を指します。

空白選択性は、一般にアイデアがどこから来るのかを説明します。


人があるアイデアを思いつくとき、つまりこの世界にある情報が出現するとき、それは私の全状態に依存します。

全状態とは文字通り全てであり、意識に上っているもの、無意識にあるもの、記憶、全ての身体的状態を指します。

人間の表現行為には、言葉や図形、身体的動きなど様々なものがあります。

これらの表層表現は、常に私の全状態とリンクした状態で存在しています。

強調の意味も込めて、私の全状態をlive backgroundと呼ぶことにします。

一言で言えば、空白選択性は、live backgroundに依存します。


空白選択性によって、アイデアが生み出されるとき、それは情報統合性向場ともリンクしています。

情報空間には「統合は生じる」という性質があり、その統合的性質が選択に有意味性を与えるためです。

私たちは常に情報統合性向場とリンクしていますが、その結びつきの強さはlive backgroundに依存します。

私たちは思考を通してlive backgroundを変化させることで、情報統合性向場とリンクし、その統合的性質の影響を受けています。


関数として表すなら、空白選択性は、

空白選択性(live background, 情報統合性向場)

という関数として表されます。

これが人間がアイデアを生み出すことができるということの根本的な説明です。


2.世界跳躍と時間

「統合は起こる」という前提に立つと、情報空間には統合という1つの大きな流れがあります。

この情報空間における統合方向を「時間」と呼ぶことは可能です。

創作理論において、時間という概念はおそらく必要ありません。

しかし、言語の中には時間的な語があり、それらを扱うために時間を定義しておくのは悪くないことです。


ある世界は、私たちの統合能力によって保持された世界、記憶された世界です。

まだない世界は、統合されていない、記憶されていない世界です。

空白選択性は、ある世界の要素だけでなく、まだない世界の要素を選び出すことがあります。

このような、まだない世界の要素をsignと呼んでいます。


signはある世界とまだない世界をつなぐ架け橋であり、標識としてまだない世界の方向を指し示します。

私たちはそのようなsignを手がかりに、まだない世界を統合することができます。

このような、signによってある世界からまだない世界が統合されることを世界跳躍と呼ぶことにします。

時間的に言えば、signは断絶された過去と未来をつなぎます。

創作においても、signを見つけることで、ある世界からまだない世界への跳躍を行うことができます。


3.signと感覚量

signは、未知性かつ重要性という感覚で捉えることができます。

signは、まだない世界の要素ですから、統合された意味を持ちません。

また、まだない世界の方向を示していますから、示しているという志向性は受け取ることができます。

その結果、「よく分からないが、重要そうな感じがする」という感覚量となります。


私たちは、思いつく前に思いつく内容を知ることはできません。

しかし、あることが重要かもしれないということは知ることができます。

例えば、森の入り口に立って、森の奥底に何があるかを知ることはできません。

ですが、森が「深そう」といった感覚は、森に入る前に持つことができます。

signに伴う感覚量は、こういった感覚量と同型です。


空白選択性によって生じる選択の中から、signを見つけ出すにはこの感覚量を探します。


4.一般的sign発見の手順

signは、一般に空白選択の列によって生じます。

空白選択とは、空白選択性により空白に何かを選択することを指します。

空白選択によって生じる要素は、一般にsign、memory、knowledgeなどがあります。

signは、一般にそれらの列(空白選択列)の中から発見されます。


一般的なsign発見の手順は次の通りです。

①空白選択を行う

②選択されたものがsignであれば終了、signでなければ①へ戻る。何も選択されない場合は③へ

③空白選択列を俯瞰し「何が重要であるのか」を捉えたのち、①に戻る


5.具体的sign発見の手順、白紙法

最後に、空白選択を白紙の紙で行う白紙法について述べます。

白紙法は白紙の紙を用いて空白選択を行う方法で非常に基本的な方法です。

白紙法に必要なものは、白紙の紙と筆記具です。


①空白選択の始まり

白紙の紙を用意したら、まずタイトル的なものをつけましょう。何でも良いですが、作品のタイトル、○○とは何か、○○について、などがおすすめです。

タイトル的なものはなくてもよいのですが、live backgroundに無意識的な志向性を与えてくれます。


②空白選択を行う

白紙の紙の空白に、何か書き込んでみましょう。最初は、今考えている事柄についてのキーワードだったり、記憶よりのものが選ばれると思います。書いている本人でも意味が判らないこともあります。

空白選択は無意識が行うので、選択に意味を求める必要はありません。選択されたものをそのまま書きましょう。


③空白選択を続ける

何か書き込んだら、別の空白に何かを書き込んでみましょう。紙は二次元的な広がりがあるので、下でも横でも好きなところでかまいません。何となくこの辺に書きたいということも無意識が選択するので、それに任せます。

空白に書き込むたびに、live backgroundは変化していき、また別の言葉や記号が選ばれます。


④書き込んだものを俯瞰する

ある程度、書き込みが溜まってきたら、これらの書き込みの中で「何が重要なのか」という視点で眺めてみてください。

途中で選択が停止してしまった場合も同様です。

書き込みの俯瞰タイムは、live backgroundをより関心のある方向へ整えます。

何が重要なのかが無意識に修正されると、空白選択性が働き、より関連性の高い要素が選ばれるようになります。


⑤signの発見

空白選択によって、「よく分からないが、重要そうな感じがする」要素が選択されれば、それがsignです。

signは、すでにあるイメージの中にはない要素ですので、感覚としてはすぐに分かります。

signが見つかったら、それをよく意識してください。


⑥まだない世界の発見

signを発見したら、それを踏まえた上で、空白選択を続けてみましょう。

signを発見したことで、今まで考えもしなかったことが選択されて出てくると思います。

これがlive backgdoundと情報統合性向場がリンクした状態です。

感覚としても感情としても、よりはっきりとしたアイデアが統合されると思います。

新しいアイデアかどうかは、今までに考えたことがあるかどうかという観点からも確認できます。

まだない世界が統合された瞬間です。


⑦終了

ある程度満足したら終了しましょう。必ずsignを見つけなくてもかまいません。

統合されたアイデアは記憶されるので特にまとめる必要はありません。

まとめておきたいことがある場合は、別にまとめると良いでしょう。

ただし、時間が経つと書いたものとlive backgroundとのリンクは切れた状態になります。

メモは単なる記録で、次回のセッションには引き継げないので注意してください。

Every time, from scratch.(いつでも、白紙から)です。


⑧無理そうなとき

どうしても集中できない日などもありますので、空白選択に抵抗を感じた場合は、無理にやらない方がよいです。空白選択は無意識の方法論ですから、無意識の抵抗にあえばうまくいくことはありません。そういった感覚は経験的に分かるようになると思います。