2011年11月5日土曜日

「ナレッジダイビング」~ようこそ知識の海へ~


ナレッジダイビング(Knowledge diving)とは、Wikipediaなどのデータベースを活用し、ある事柄に関する広範な知識を修得することを目的とした知的スポーツである。また、これは近年の情報化ではじめて可能になった、ハイパーリンクを積極的に利用する新しい学習方法でもある。

では、さっそくナレッジダイビングのルール、効能、推奨されるツールなどについて紹介しよう。

■ようこそ広大な知識の海へ

「ネットサーフィン」という言葉に代表されるように、インターネットの世界はよく海に例えられる。それは、ネットに存在する多量の情報の集合体が、水平線のかなたまで広がる海の姿と良く似ているからだろう。

「ネットサーフィン」はどちらかというと、複数のサイトにまたがり海の表面をなでていく横方向の運動だが、「ナレッジダイビング」はその海に深く潜っていく縦方向の運動である。

「ナレッジダイビング」の舞台としてはWikipediaがふさわしい。Wikipediaには様々な事柄に関する知識が整理、集積されておりそれらがハイパーリンクで密接に結び付けられている。このような「十分な情報量」と、「各情報間のアクセス容易性」を兼ね備えたサイトはWikipedia以外にはあまりない。Wikipediaはまさにネット上の「広大な知識の海」といえる。もちろん他にもそういう場所があればダイバーは喜んで潜るだろう。

さあ、みなさんも準備を整え知識の海へダイブしよう。そこには、不思議のダンジョンさながらの新しい発見と冒険が溢れている。時には過酷で、帰還できるか不安になるようなこともある。そういう緊張感もダイビングの魅力の1つだろう。

■ナレッジダイビングのルール

ナレッジダイビングのルール(やり方)は次の4つの基本動作、2つの特例、1つの推奨行為からなる。これらを一言で言えば、「リンクをタブで開いていき、理解し、無事戻ってこられればダイビング成功」である。

(ナレッジダイビングに最低限必要なものは、Wikipediaとタブブラウザの2つである。ただし、Wikipediaと同じ性質を備えたサイトがあればそれでも構わない。)

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基本動作:

①ダイビングポイントを設定する
まずはじめに、Wikipedia上で興味のある言葉のページを開く。このページをダイビングポイントと呼ぶ。

②読む
開かれたページを読む。

③開く(潜る)
もし、途中で自分で説明できない単語(リンク)があれば、そのページを新しいタブで開き移動する。(すでにそのページのタブが開かれていた場合も新しく開くことを推奨する。)
ダイビングの深度(depth)はタブの数で表される。単位はタブ(tab)である。

④閉じる(浮上する)
あるページを読み終えたらタブを閉じて、直前のタブへ戻る。すべてのタブがなくなればナレッジダイビングは終了である。これを帰還するという。

ダイバーの判断による特例:
基本動作だけでは、多くの場合リンクが拡散し帰還が困難になるため、ダイバーは全体を見渡しどこかでリンクを断ち切る必要がある。そこで、ダイバーには基本動作以外に次の2つの行為が許される。これらによってダイビングの自由度が向上する。

⑤イグノア(ignore:無視する)
リンクは、ダイバーの判断でそれを無視することが出来る。ループしている場合、内容が細かすぎる場合、帰還が困難になると判断した場合などに行う。特例として様子見で開いたページについてはその場で閉じても良い(これはリンクを無視したのと同じである)。

⑥カットオフ (切り取り)
ページは、ダイバーの判断で読むかわりに保存してもよい。(URLをドラッグしてショートカットとして保存する。あるいはブックマークなど。)保存したページは閉じる。保存されたページは、次回以降のダイビングポイントとして利用できる。要は「後で読む」という建前で無視する。

さらに、推奨される行為:
これはルールではないが、ダイビングの質を向上させるのに役に立つ。

⑦地図を作る(mapping)
効果的な知識の修得のためには、インプットだけでなくアウトプットが重要である。そのため、まとめるとどういうことなのかというメモを残す。これは単なる記録というよりは、抽象的理解を促す為に行う。知識の修得は抽象的な理解がなされてはじめて達成されるからである。(そうでないものはすぐに忘れてしまう。)地図の作成方法は自由だが、マインドマップとの相性が良い。

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■ナレッジダイビングによる効能

①圧倒的に知識量が増える
まず、ナレッジダイビングをすると圧倒的に知識量が増える。これが第1の効能である。例えば「スキューバダイビング」という言葉を知っているかと問われれば、多くの人がYESと答えるだろう。しかし、「スキューバダイビング」について「良く」知っているかと問われれば、NOと答える人が多いはずだ。「スキューバダイビング」という単語を知っているということと「スキューバダイビング」に関する様々な知識を知っているということは全く別の問題だからだ。人物に例えるなら、ある人の名前を「知っている」ということと、その人について「良く知っている」ということが違うのと同じである。ナレッジダイビングが、もたらすのは後者のある事柄についての広範な知識である。

②知識が統合される(知識の最適化)
ナレッジダイビングでは、ある事柄を説明する際に用いられる言葉(リンク)をたどっていくため、自動的に関連分野が参照され、全体像が把握される。つまりナレッジダイビングでは統合されない雑学ではなく、全体のまとまりをもった知識の修得をすることができる。全体のまとまりをもった知識は、忘れにくく、かつ広く利用可能な知識となる。

③予期せぬひらめきが生まれる
知識量が増え、知識の最適化が行われると、さらに一段上のひらめきが生まれる。これはナレッジダイビングが関連性の高いものから低いものまですべてリンクで繋がっていることに由来する。定義のネットワークから明示的でない新たな関係性を見出す。それがここで言うひらめきである。また、このことはセレンディピティの開発にもなっている。

■推奨されるツール

ナレッジダイビングに適したツールについて紹介する。

・Google Chrome(ブラウザ)
ナレッジダイビングでは時に数十~百個程度のタブが開くことになる。さらに、1日で終わらない場合はタブを保存する必要があり、再度開く場合には数十個のタブが一斉に開くことになる。そこで、動作が軽くタブが保存できるGoogle Chromeが最適だ。百個程度のタブなら平気で開いてくれる。

・マウスジェスチャー
タブで開く、閉じる、タブを移動するを頻繁に行うため、それらの作業が簡単になるマウスジェスチャーを使えば基本動作が楽になる。Google Chromeの場合、例えば拡張機能の「Gestures for Chrome」を入れれば使える。

・タブ数計算機能、一覧機能
ナレッジダイビングではタブの数が状況を表すパラメータ(深度)になるので、タブの数を数える機能が欲しい。また、タブを沢山開くとタブが小さくなったり、一定以上のタブは画面外にいってしまってタイトルを確認することが出来なくなる。そこでタブの一覧機能も望ましい。Google Chromeの場合、拡張機能の「Quick Tab」など。

マインドマップ(メモ術)
マインドマップは、知識を整理して記述するのに向いている。また後で見直すことも容易である。マインドマップはマップというぐらいで、ナレッジダイビングの地図作りに適している。知識の最適化用と言える。ただし、離れた関連分野や、思いつきを書くのには向かない。また、個人的にはスピードアップのため、モノクロで書き、装飾もあまり用いない。


ナレッジダイビングのコツとしては、非常に興味のある言葉から始めることだ。
ナレッジダイビングは無料でしかも、いくらでも深く潜ることが出来る。スリリングなことが好きな人、学術的な刺激が好きな人、知識を増やそうと考えている人、ネット上のコンテンツに飢えているユーザーにとっては特にお勧めである。