コクリコ坂を観てきた。ストーリー解析をしつつ、レビューをする。
以下はすべてネタバレなので、まだ観てない人は是非観てください。
コクリコ坂の基本情報はwikipediaで。→コクリコ坂
■声優情報
松崎海 - 長澤まさみ
風間俊 - 岡田准一
水沼史郎(生徒会長) - 風間俊介(ジャニーズJr.)
伊達男の生徒会長はジャニーズJr.。サブキャラクターだがキャラが立っていた。
■ストーリー解析
メインドライバーは
1.海と俊の恋が障害を越えて実る(L-F-L)
2.文化部部室塔「カルチェラタン」の取り壊しを阻止する(E-G)
の2つ。そこで主要人物はこれらの主体者、松崎海、風間俊、水沼史郎である。理事長もドライバー上は主要人物であるが、非常に脇役的扱いを受けている。
終始2つのドライバーが平行して進行し、中盤からは2でストーリーがドライブされていくが、視聴者としては、1が気になってしょうがないと言う感じ。掃除で盛り上がる中、寂しげな海の描写などもあり、2の中にあっても絶えず1のドライバーが強調されている。ドライバーの配分は非常にバランスが良いが、内容の点では1と2はほぼ分離している。
それは2のドライバーが原作には無く、映画で付け加えられたものということとも関係していると思われる。2は、1ほど視聴者の関心を引くものではないが、1の恋愛だけでは絵的にも内容的にも映画として成り立たないという判断があったのではないだろうか。それに2の部分が妙に駿っぽい気がするのは気のせいだろうか?2あっての映画「コクリコ坂から」と言えそうだ。
さらに1の障害として海と俊の兄妹疑惑があり、それの提示と解決がサブドライバーとして存在する。
3.海と俊の兄妹疑惑が解消される(E-G)
このドライバーでは、母松崎花、船長小野寺善雄などが脇役として登場する。Gドライバーの主体は難しいが、海と風間明雄(俊の父)であろうか。海と俊が2人でいるシーンは兄妹疑惑の渦中は兄妹に、それ以外は恋人同士に見えるから不思議である。
イベントを整理すると次のような構成になっている。
L 海と俊出会う
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E ★「カルチェラタン」取り壊しの危機
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L 海と俊仲良くなる
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E 海と俊の兄妹疑惑
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G ★「カルチェラタン」大掃除
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F 海、兄妹疑惑にショックを受ける
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G ★理事長に直談判
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L 海告白
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G 母によって出生の秘密の一部が解消される
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G ★理事長視察「カルチェラタン」存続決定
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G(L)出生の秘密明らかになり海と俊の障害消滅
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ハッピーエンド
★マークは「カルチェラタン」サイドのイベント
マクロに見るとおよそ
L-E(F)-L-G(L) 海と俊の恋愛
E--G--G 「カルチェラタン」
という構成である。
■総評
海が、「実は俊とは兄妹である」という決定的な恋の破綻に晒されながらも、それを乗り越えていく姿がこの話の見所と言える。また、旗にこめられた父への想い、海の心のよりどころの母など、父母が非常に美しく描かれている。海の告白後は、憑き物が落ちるように2人は兄妹では無いことが判明し、理事長も全く話をこじらせることなく取り壊しは中止されるという、なんともラッキーなストーリー展開になる。感動するというよりは思わず良かったねと声をかけたくなる終わり方で、全く嫌味が無い。これを見て、真っ向から批判できる人は相当な変人だろう。
映画「コクリコ坂から」は日常を描きながらも、展開されるのは現代人には全くの非日常的世界であり、ゆらゆらとゆりかごの中に入れられた大人(視聴者)が、夢を夢と知らずに幸せそうにうたた寝をしている、そんな映画であった。